そんな中、ついに気賀も戦争に巻き込まれてしまう
もくじ
前回(第33回)のお話をサラッとおさらい
家康が井伊谷へ進軍してきた
しかし、開城時に何者かが攻撃してきた
実は近藤の企みであったのだが、井伊側に罪をなすりつけられてしまう
政次は事態を収拾するために自ら罪は被り、磔の刑に処せられる
第34話 2017年8月27日放送
ネタバレを含みます
まだ詳細を知りたくない方は読まない方がよいでしょう
会話多めで書いています
直虎、碁盤に向かう日々
直虎は政次の死はあまりにも酷だったようで、かなり精神的に参っていた
部屋に籠もり、取りつかれたように碁を打ち続ける日々が続いていた
昊天「次郎、隠し里へ行きませのか?祐椿様も戻ってこいと仰せですし」
南渓「行ってきてはどうじゃ。皆もそなたと話したくもあろうし」
直虎「いえ。今宵あたり、但馬が来るかもしれませぬ」
南渓「次郎……ん?」
直虎「近藤殿が、どうも井伊へのたくらみを持っておるようなのです。但馬が来たら、どうやって処するか話をせねばなりませのゆえ」
ごく当たり前のように言って、また碁石を置いた
南渓と昊天は、顔を見合わせて絶句した
直虎の中では、まだ政次が生きているということになっているようだ…
徳川軍は引間城に入場して
井伊を通り抜けた徳川勢は遠江を攻め進み、引間城(浜松城)に入城
さらに氏真のいる掛川城へと進軍しようとしていた
忠次「山沿いの国衆は戦わずして下るところが多いな。ありがたい話じゃ」
忠勝「次は掛川、同時に湖岸攻めとなりますか」
忠次「堀江の大沢はなかなか手ごわい。こちらはやっかいな話じゃ」
大将の家康は、いつものように一人で碁を打っていた
そこに山伏の常慶が現れた
忠次「こたびは引間での調略、大儀であった」
常慶「は。その、先頃、井伊のほうがもめたと伺ったのですが、一体……」
自分が仲立ちをしたこともあり、常慶は噂を耳にして気になっていた
忠次「おお、思わぬ手向いがあったが、そこにいる者たちがうまく図ろうてくれての」
近藤たちが、それぞれ頭を下げる
常慶「それで、井伊のお家はいかような次第に?」
数正「改めて話す」
忠勝は、常慶が手に持っている鉄砲に目を留めた
忠勝「その種子島はなんじゃ?」
家康も常慶のほうを見る
常慶「徳川に戦道具や兵糧をお納めしたいと申す者が来ておりまして。お目通りさせてよろしいでしょうか」
家康「これは何よりありがたい。早うその者を」
山のように武器を荷車に積んだ商人とその家人が入ってきた
商人「このほかにもご入り用のものがございますれば、なんなりとお申しつけくださりませ」
豪商らしく、高価な織物の羽織袴をまとい、全身金色尽くしである。
家康「お瞭しはどこの商人じゃ」
方久「よくぞお訊きくださりました。それがしは商人にして気賀の城主・瀬戸方久と申します!」
時が止まったような龍潭寺と不穏な空気の気賀
龍潭寺にやってきた龍雲丸は直虎の様子を見て驚いたようである
南渓も参っている様子なのをみかねて、こう声をかけた
龍雲丸「まあ、ああやってる分にはつらそうでもねえし、本人は案外幸せなんじゃねえですかね。あわれだってなぁ、こっちの勝手な見方でさ」
気賀へ戻ろうとした龍雲丸に南渓が声をかけた
南渓「老婆心じゃが、一度、気賀の動きを確かめておいたほうがよいぞ。戦は何が起こるか分からぬ。巻き込まれ旧ように」
龍雲丸は、与太夫に事情を聞こうと中村屋にやって来た
与太夫「徳川様はすでに引間に入ったというし、その後も破竹の勢いで攻め進んでおる。こたびは徳川様についたほうが得策であろう、と」
龍雲丸「……そう考えた井伊は、組んだ徳川に足をすくわれましたがね」
井伊が徳川から見捨てられたことを話した
与太夫「おいたわしい」
龍雲丸「あまり信用ならねえと思いますが、徳川ってなあ」
与太郎「……井伊と気貸では事情が違おう。湖畔は今川への忠誠を誓う者が多く、徳川も苦戦しておると聞く。味方となるのは気賀ばかりのはず。井伊のような憂き目には遭うまい」
南渓の言うように、戦は何が起こるか分からない
根城に戻るや、龍雲丸は皆に荷をまとめるよう指示した
龍雲丸「戦のににおいがしてきたからな。いつでも逃げ出せるようにしとかねえと」
一方、龍潭寺では
直虎「……常慶が言うには、近藤殿が井伊を乗っ取ろうとしておるらしいのです」
南渓「そうなのか。では早々に手を打たねばの」
直虎「これを止めねば、今までの但馬の苦労はすべて無に帰してしまいます。なんとしても近藤殿を止めねは……」
そのとき、ゴトッと音がした
直虎「待ちかねたぞ、但馬!」
戸を開けたが、廊下には誰もいない
直虎「……気のせいか」
がっかりして肩を落とした…
気賀で戦火が上がる
一方、遠江では、徳川軍の猛攻にもかかわらず、氏真が立て籠もった掛川城は持ちこたえ、膠着状態が続いていた
重臣たちが寝返る中、掛川城城主の朝比奈泰朝が奮戦していたのである
浜名の湖岸においても、今川方の大沢基胤が徳川から宇布見砦を奪還し、船を奪われた徳川軍は苦戦を強いられることになった
そんな中、ついに気賀で戦火が上がった
大沢の兵が押し入ってきて、蔵の武器が奪われ、港の船は接収され、水夫たちが捕らえられた
大沢の兵「刃向かうな!刃向かえぱ撃つぞ!」
大沢の兵「さっさと降りよ!降りてそちらへ並べ!」
堀川城には、大沢配下の土豪たち、山村修理、尾藤主膳、竹田高正らが、手勢を率いて乗り込んできた
土豪「今日よりここは大沢の城になる!これよりはわれらと共に徳川と戦え!」
船にいたゴクウが水夫たちと城へ連れていかれたことを、龍雲丸はカジから知らされた
そこへ、与太夫が慌ただしくやって来た
いったん、気賀を出ることにしたという
与太郎「船に乗せられるだけの者を乗せ、ひとまず逃げる。熊野屋たちにも声をかけた。外海に出、徳川様の陣に参ろうかと」
龍雲丸も一緒にどうかと誘われたが断ってしまった
龍雲丸「お心はありがてえんですが、俺らは俺らでやりますんで」
堀川城の主殿に、町の男や百姓、水夫たちが大勢集められた。皆、鉄砲で脅され無理やり連れてこられた者たちで、これからどうなるのだろうと不安そうに話している
そこにに、力也とほかの龍雲党の面々がいた
ゴクウ「力也さんどうして?」
力也「俺はたまたま城の修繕で来ててよ。こりゃいってぇ何が始まってんだ?」
いきなり銃声が響きわたった
主殿が一瞬にして静まり返る。威嚇のため、尾藤が上に向かって発砲したのだ
尾藤「おのしらの城主は、おぬしらを置いて逃げた。頼みの綱としておる町衆たちも。近く、徳川が攻め込んでくるを恐れてな。おぬしらは見捨てられたのじゃ!」
ざわつく一同に、山村が二の矢三の矢を放つ
山村「その徳川というのは、今川様のように寛大ではない。戦、戦で成り上がってきた鬼のようなやつらじゃ。勝てば略奪のかぎりを尽くそうし、下ったとても、人買いに売られるだけじゃ」
尾藤「腹をくくれ!うぬらには、もうあとがないのじゃ!」
力也「わしらはもう戦うしかねえってことか?」
後ろから小さく声がした
龍雲丸「巻き込まれてどうすんだ。あほらしい」
力也「頭!」
龍雲丸「俺らは逃げてなんぽだろうが」
いつの間にか龍雲丸が紛れ込んでいた
そして、隠し港からこっそり逃げ出そうというのだ
銃声がした
そろそろと様子をうかがうと、自力で逃げてきたらしい二人の男が、大沢の兵に捕まり暴行を受けている
胸倉をつかまれ、城内に引きずられていく
力也「そういや、この城は皆を逃がすために造ったんだよなあ」
引間城は、徳川軍の負傷者でごった返していた
忠勝「浜名の湖岸から、掛川に人を回すことはできませぬのか」
掛川城がなかなか落ちないので、皆、いらだっている
忠次「湖岸は湖岸で苦戦しておる。湖岸の兵を掛川に動かせば、背後から突かれることにもなせぬ」
そこに、着の身着のままの方久が倒れ込むように入ってきた
方久「城を、城を今川方の大沢に乗っ取られてしまいました!どうか、気賀を、城を取り戻してさいませ!城の攻め所、急所、潮の満ち引きなど、なんでもお教えいたしますゆえ、何とぞ!」
忠勝「しかし、気賀より先に抑えねばなら旧ところが山ほど……」
そこに、気賀の商人、与太夫たちが助けを求めてきた
与太郎「いらぬ刃を交えるよりはと、こうして急ぎ民を乗せ、徳川様の元にはせ参じたわけにございます。どうか、われらをお助けくださりませ。気賀に戻れました暁には、船、武具、兵糧など力を尽くし整えますので」
家康「方久、あの城の船着き場は、表だけか?」
方久「いいえ、実は城の裏側にもございますが」
家康「丑の刻に潮が満ちるのはいつじゃ」
数正「殿何か妙案が?」
家康「まずは夜陰に紛れ、城の裏に船を着ける。そこで、捕らわれた民をこちらの船に逃げ込ませる。中におる民を引き揚げてしまうのじゃ。さすれば、城内に残るは大沢の者のみになる。落とすのはたやすかろう」
数正「そして、その大沢の武将たちの首と引き換えに大沢の降伏を求める」
家康「中村屋とやら、それでは船を借りられるか?」
中村屋「もちろんでございます!」
与太夫に続き、方久も頭を下げる
直虎は南渓と井戸端を散策していた
“もし”と男の声がした
そこには目付の1人鈴木がいた
鈴木「あの、お渡ししたいものがございまして」
なぜか申し訳なさそうに、折り畳んだ紙を直虎に差し出す
鈴木「但馬殿の辞世だそうです」
直虎「辞世?何故、辞世などがあるのじゃ」
それは、死に際した者が詠むものだ。生きている政次がなぜ、そんなものを…
鈴木「牢番の者が捨てるにも忍びないと」
鈴木「牢?どういうことじや?」
直虎「但馬殿が最後に入れられておった」
鈴木も直虎の様子がおかしいことに気付いたようだ
南渓「鈴木殿、私がお預かりしておきます」
直虎が南渓の手から紙を奪い取った。紙を開くとそこに書かれていたのは
白黒をつけむと君を独り待つ天伝う日ぞ楽しからずや
歌の意味を理解した瞬間、直虎はすべてを思い出した
直虎の代わりに政次が牢に入れられたこと
井伊を、直虎を救うために、政次が犠牲になったこと
直虎「……ああ、もう、おらののでしたね、但馬は……」
すべての罪を背負って、見せしめとなって、たった一人で政次は逝ってしまったのだ
直虎「但馬は、もう……」
明るい陽の光の下で碁を打とう!
そう約束したのに
直虎はポロポロと涙をこぼした
堀川城を占拠した尾藤らが軍議を行っていると、ふいに燭の明かりが消え主殿が暗闇に包まれた
大沢兵「なんじゃ」
大沢兵「どうした?」
城の周囲のかがり火も消えている
龍雲丸たちの仕業だ
カジとモグラは大沢の兵たちを次々と湖に落とした
一方では、ゴクウと力也が、気賀の民を逃がそうと隠し港のほうへ誘導していた
大沢兵「くせ者じゃ!出合え!出合え!者ども、出合え!」
しかし、暗闇の中では、誰が敵で誰が味方か分からない
山村「早く明かりを!くせ者を捕らえよ!」
混乱に乗じて、龍雲丸が尾藤の背後に忍び寄り刀を突きつけた
龍雲丸「侍は侍どうし、てめえらだけで戦えや!人のふんどしで相撲取ってんじゃねえわ、ばーか!」
そのとき、松明を持った兵が駆け込んできて、龍雲丸の顔が照らされた
一瞬の隙をついて尾藤が龍雲丸を振り払い、山村たちが斬りつけてきた
龍雲丸は窓から飛び降りた
隠し港の船には、気賀の民たちが殺到していた
ゴクウ「乗り切れねえ!」
力也「ゴクウ!あれ!」
こちらへ向かってくる船団を指さした
ゴクウ「中村屋の船だ!」
力也「あれだ!あの船まで泳いでけ!」
力也が民に向かって叫んだ瞬間、船から飛んできた矢がゴクウの胸に命中した
力也「ゴクウ!」
力也が駆け寄ろうとするが、矢が雨あられのように降り注ぎ近づけない
龍雲党の仲間や、武器を持たない民たちがバタバタと倒れていく
力也「何故、中村屋が」
家康から堀川城攻めを任された忠次は、眼下に城が見下ろせる場所に本陣を置いた
伝令「第一陣が裏手から城に攻め入りました」
忠次「よし、そのまま攻め落とせ」
方久「……え?酒井様」
忠次「なま阻るい仕置きでは大沢は下りはせぬ。見せしめがいる」
方久「しかし、気賀の民は、お、お助けくださると、徳川様は……」
忠次「手向かいをした。それまでのことじゃ」
捕らわれたともども、大沢をひねり漬してしまおう、最初から決めていたのだろう
夜明けになり、傷を負って城の一角に逃げてきた龍雲丸は、眼前の光景に呆然とした
潮が引いた中州を来たらしく、泥だらけの徳川兵が大沢兵と戦っている
城に閉じ込められた気賀の民は追い詰められて、徳川兵にも大沢兵にも手向かっている
怒号と悲鳴、まるで地獄絵図だ
死傷者は数えきれないほどいる
その中に、手負いのカジの姿を見つけた
刀を構えた兵に囲まれている
カジの足元には、いるのか死んでいるのか、モグラが倒れていた
龍雲丸はそばの死体から刀を抜くや、飛ぶように走った
兵の刀がカジに振り下ろされる寸前、背後から敵を倒した
龍雲丸「カジ、大事ねえか」
カジ「へえ」
龍雲丸「よし、逃げ…」
その瞬間、脇腹に鋭い痛みが走った
(刺したのは尼姿の直虎…?)
直虎「あああああああああ〜」
自分の悲鳴で、直虎は飛び起きた
南渓「どうした!どうした?苦しいか?」
汗をびっしょりかいて、息も荒い
直虎「……夢を、見て……人を、殺す夢を」
南渓「たかが夢じゃ、次郎。朝が来れば終わる。終われば、わしらがおる」
方久「お、和尚様!和尚様はおられますか!」
南渓が戸を開けると、ボロボロになった方久と辰がいる
南渓「どうしたのじゃ、その格好は」
方久「気賀が、気賀が……気賀が、徳川に襲われました!」
夢の中で倒れていった男は、やはり龍雲丸では?
南渓「次郎ーーー!」
直虎は慄然として、考える余裕もなく駆け出していた。
おもな出演者
井伊 直虎 主人公(次郎法師) 柴咲コウ
南渓和尚 龍潭寺の住職 小林薫
昊天 龍潭寺の僧 小林和重
龍雲丸 旅の男 柳楽優弥
德川家康 松平家当主 阿部サダヲ
瀬戸 方久 瀬田村の商人 ムロツヨシ
【大河ドラマ放送日時】
毎週日曜 総合テレビ 午後8時より
BSプレミアム 午後6時より
再放送 毎週土曜 総合テレビ 午後1時5分より
●各回のあらすじはコチラ です➡「おんな城主 井伊直虎 」あらすじ一覧
しのぶの一言
政次がこの世にいなくなったこと
そして自分が手を下したこと
直虎はその現実を受け入れられず
頭がおかしくなったのだ
でも、そうやってバランスをとらなくては、いくら気丈な直虎だって耐えられないに違いない
いつもはどんな難問でも、光を与えるような答えを用意してくれる南渓さえもお手上げな様子
そして、あんなに賑わっていた気賀の町が、戦争に巻き込まれてしまう
罪のない民たちが武士たちに殺害されてしまう
その中には、あの龍雲丸や仲間たちもいるのだ
…もう、どん底だ
戦国の世って本当に酷い…
でも、今はどん底なのかもしれないけれど、この後きっと盛り返すに違いない
虎松だって生きているはずだし、井伊は再興するのだから
今は見ているの辛いけど、きっと我慢の時なのだと思う
政次が命をかけて守ってくれた井伊を、直虎たちがどうやってまた再興のしていくのか
しかと見届けないと!