前回(第39回)のお話をサラッとおさらい
虎松(菅田将暉)たちが直親の13回忌の法要のために井伊谷にやって来た
虎松は井伊谷が豊かになっている様子を見て感心する。しかしそれが領主の近藤(橋本じゅん)ではなく、影で直虎が動いているのだということを聞き、虎松は怒りを覚えた様子だった
虎松は直虎に井伊を再興する意思があるのか尋ねるが、直虎はないという
それならば自分が井伊を再興しようと気持ちを新たにして、虎松は家康に接触することを試みる
その結果、徳川家に井伊家の名で仕官させてもらうことには成功したが、超下っ端の草履番としてのスタートとなってしまった
第40話 2017年10月8日放送
ネタバレを含みます
まだ詳細を知りたくない方は読まない方がよいでしょう
会話多めで書いています
万千代 vs 直虎
松下虎松が、井伊万千代となり徳川家に仕える。その知らせは、松下と井伊の両家に大きな衝撃を与えた
松下家の当主の源太郎は跡取りを失った悲嘆のあまり寝込んでしまった。直虎はしのに請われるまま虎松に文を書き、さらに近藤のもとへ申し開きに出向き、と奔走を余儀なくされた。
草履番となった万千代は、浜松城に出入りする徳川家家臣全員の名札を用意し、脱がれた草履に付けるなど、仕事の効率をいかにしたら高められるか工夫に余念がなかった
常慶が、井伊や松下からの手紙の東を届けに現れたことがあったが、封を開いてもいない。松下姓でなら今すぐ小姓になれる。そうしろ。そんなことが書き連ねてあるのは、読まずとも分かっていたからだ
最も多忙なときは、皆が下城する夕刻だった。誰もがわれ先に草履を求め、手間取ると怒声が飛んできた
万千代「やっかいなのは、出すときにすぐに探せぬことよの」
並べて置いておけば混乱せずにすむ。そこで棚を設けることを思いついた。そのとき、
虎松、と呼ぶ太い声がした。そこには、最も見たくない人物の姿もあった
直虎「少し話がある」
虎松「お役目の最中にございますので」
直虎「ではそのままでよい。そなたは井伊の亡きお方たちのためと思うて、こたびのような仕儀を考えたのであろう。じゃが生き残っておる者たちにとってそなたのやっておることは、ありがたいとは言いがたい」
奥山たちは松下に顔向けできぬ。近藤殿も憤激している云々と
万千代「そなたはもう当主でもなんでもない、ただの百姓ではないか。何ゆえ俺が説教されねばならんのだ!」
直虎「そなた、か……。当主とはなんじゃ?己以外の誰も望んでもおらぬ、生きておる者を困らせ、悲しませるだけの行いをする者のことを、当節では当主と呼ぶのか」
虎松「では、何ゆえあの日、降りられたのじゃ!隠れ里をともに守ろうと言っておきながら、なぜ当主の座を投げ出したのだ!」
横合いから鋭い声が飛んだ。
忠次「騒がしい、何をしておる!常慶、この者は?」
常慶「井伊の先代、直虎様にございます」
家康 vs 直虎
重臣らしい男の横には、恰幅のよい男が立っていた
常慶と万千代、万福が急いで平伏する。男が家康であることを察した直虎は、三人に続いて平伏した
家康「井伊殿。しばし、暇はおありか?せっかく来られたのじゃ。ぜひ、話がしてみたい」
家康「今日は井伊のご家名のことでおいでになったのか」
直虎「井伊の生き残りとしては、やりにくいことこのうえない。松下にも近藤に対しても顔向けができない。加えて、潰れておる家の者であるからこそ、話が通ることが多くございますゆえ。潰れているからこそ、私が何を言いだそうと、お家のためではなく、民や、井伊谷という土地にとってよいことだと信じてもらえるのです」
家康「……松下のみならず、井伊の者すら、万千代の、ある意味、わしがやったことを喜んではおらぬと」
直虎「恐れながら、迷惑千万にござります」
苦笑する家康に、直虎は最も知りたいことを聞いた
直虎「そもそも何ゆえ、あの子の言葉をお聞き入れくださったのですか。徳川のお家にとり、井伊の家名回復になんの利があるものか、私には測りかねます」
家康は即座に、三つの理由を挙げた。直親のときも、井伊谷に攻め入ったときも、井伊を助けたかった。が、助けうるだけの力がなかった。その悔いから解き放たれたかったというのが一つ。二つ目は、瀬名の望みを聞き入れてやりたかった。そして三つ目はー。
家康「万千代が、武将として大きく育つと思うたからじゃ」
直虎「育つ?」
家康「松下の跡取りとすれば、皆の目は温かい。じゃが井伊の遺児となれば、さまざまなことを言われることと思う。今川の国衆の子、銭で潰れた家の子、あるのは家格だけ。……なれど、あの子は、たたかれればたたかれるほど奮い立つような気がしての。違うか?」
直虎「…..いえ、仰せのとおりにございます」
家康「この先、万千代が手柄を立てれば、わしはそれなりの処遇をするつもりでおる。……それが今後の徳川の生き残りを分けることにもなるとも思う」
家康「徳川の所帯も大きくなった。家中には今川の者、武田から来た者もいる。三河者でなくとも、実力次第で出世が望める、そういつ家風にならねば、謀反が相次ぐことは目に見えている。万千代は、その先駆けとなる力を秘めておるような気がするのじゃ」
直虎「ずいぶんと高く買うてくださり、恐縮にござります」
家康「わしは信玄公のように戦に懸けておるわけでもなく、信長公のように天賦の才があるわけでもない。その分、人は宝じゃ。大事にせねば」
しみじみとした言葉に、強い共感を直虎は覚えた。
直虎「その昔、井伊にはまこと人がおりませんで……、人がおらねば何もできぬのだと、痛感いたしました」
家康と語り合ううち直虎は、非凡なる凡という言葉を思い出した。虎松のあとあとの使い道も考えておられる。主として仕えがいのあるお方となるであろう
松下家の問題は、意外な形で決着することになった
虎松の説得が不首尾に終わったことを知らせに行った直虎を痛烈に罵倒するしのに、病床に身を起こした源太郎が言った
松下源太郎「わしがもうかまわぬと言うたら、それでよいか?」
しの「な、何をおっしゃっておいでです。かような勝手、殿が引くいわれは毛頭ございませぬ!」
源太郎「そなた、井伊家の再興がうれしくないわけではあるまい。そなたは虎松の母じゃし、たとえかりそめでもわしは父じやった。ならば最後まで親らしくあらぬか?あやつの思つように送り出してやらぬか?」
しのが、わっと泣きだした。その隣で直虎は、深く頭を垂れた。すぐにも松下の養子を探さねばならない
だが、虎松と亥之助が井伊と小野を名乗り、ともに歩いていくことを思うと、源太郎には申し訳ないけれど、直虎は、新たな希望の灯を得た気もしていた
万千代と万福は、ひと月以上を費やし、究極ともいえる草履番の技を完成させていた。家臣全員の名と顔を覚えておき、玄関に誰かが近づいてくると、その足元に向け、草履を正確に滑らせるのだ
万千代「はい、お次。金田様、木原様、多門様~」
万福が復唱しながら草履を渡す
受け取った万千代は、廊下に素早く草履を投げる。と、シュタッと乾いた音を立てて滑った草履が、各自の足の手前でぴたりと止まる。締めに、万千代が叫ぶ
万千代「お勤めご苦労様にございました!」
その様子を見ていた家康は、笑って側近に言った
家康「あれはもう、日の本一ではないかの」
小姓への道が開けたかと思われた。しかし万千代たちは、新たな条件を突きつけられてしまうのだった
おもな出演者
井伊 直虎 主人公(次郎法師) 柴咲コウ
井伊万千代(虎松)徳川家家臣 菅田将暉
小野万福(亥之助)井之脇海
徳川家康 松平家当主 阿部サダヲ
近藤康用 井伊谷領主 橋本じゅん
常慶 徳川家家臣 和田正人
酒井政次 徳川家家臣 みのすけ
松下源太郎 徳川家家臣 古館寛治
しの 源太郎の妻 虎松の生母 貫地谷しほり
【大河ドラマ放送日時】
毎週日曜 総合テレビ 午後8時より
BSプレミアム 午後6時より
再放送 毎週土曜 総合テレビ 午後1時5分より
しのぶの一言
松下家でお世話になっていたのに勝手に井伊家の再興を願い出て押し通してしまった万千代
それは一瞬にして井伊家と松下家を大混乱に陥れてしまった。その行為は一見、傲慢にも見えたけれど、それは、幼い時の井伊家を守ると誓ったこと、ただそれを純粋な気持ちでまっすぐに貫いたものであったのだ
今回、万千代と万福が徳川に仕えたということで、井伊家と小野家が再興するはこびになるはずで、それは井伊の者たちにとっても新たな希望の火を灯したことでしょう。近藤の手前、おおっぴらには喜べないし、これからの関係も問題が生じてくることは必須ですが…
それにしても、後半から登場した万千代役の菅田将暉くんが大河ドラマに違和感なく溶け込んでいるのがすごい。表情が豊かすぎて、何回も笑ってしまいますー。楽しい!
◎各回のあらすじはコチラ ➡「おんな城主 井伊直虎 」あらすじ一覧
◎前回のあらすじはコチラ ➡ 第39回あらすじ