前回(第41回)のお話をサラッとおさらい
万千代と万福の草履番の後任としてやってきたのはノブという中年男
一見、うだつの上がらないこの男は色々とワケありのようす
武田信玄の亡き後、なりをひそめていた武田軍が動きだし、徳川の管轄領を脅かし始めた
第42話 2017年10月22日放送
ネタバレを含みます
まだ詳細を知りたくない方は読まない方がよいでしょう
会話多めで書いています
長篠の戦いへの道
天正13(1575)年5月、徳川、織田の連合軍は、長篠城の西方に広がる設楽ヶ原に着陣した
信長の差配により、土塁を築き、空堀を掘り、延々と続く柵を設けるという普請がすでに進んでいる
この馬防柵のために、大量の材木が調達されたのだった
しかしそれは、徳川諸将からしてみればあまり面白くない話である
忠世「あまりにも無礼ではないか。織田はあくまでわれらの援軍。その援軍がわれらの戦を仕切るなど……!」
本陣では、
織田の重臣「こたびの戦は、主に鉄砲を用いたいと存じます」
信長「徳川がいまだ武田に勝てぬのは、そなたがあくまで武田と同じやり方で戦おうとするからじゃ。ならば、向こうをこちらの望む戦場に引きずり込んでしまうのがよいと思うが、違うか」
援軍とはいえ、織田の兵は徳川のおよそ3倍。立場も、織田が主家に近い。何よりも信長の発する重圧に、異を唱えることのできる者は一人としていなかった。
浜松城に残された万千代はやる事がなく手持ち無沙汰だった
万千代「この際、作り直そう。段をもう少し低くして、棚を増やせば、より多くの草履を入れられよう」
万福「草履棚のことにございますか?」
万千代「日の本一の留守居をと仰せつかったのだ。俺は丸太で失ったものを、留守居で取り戻す……!」
言うが早いか万千代は棚を壊し始めた
設楽ヶ原の徳川陣営には、岡崎から兵を率いて布陣した家康の嫡男・信康の姿もあった。
夜、父子で碁を打ちながら信康は信長から名物の茶碗をやろうかと持ちかけられたことを話した
信康「無礼にならぬよう、お断りいたしましたが……」
信康の妻、徳姫は信長の娘で、二人は義理の親子に当たる。が、信長の所有する茶碗なら、城が一つ建つほどの価値があるのだろう
裏に何かあるのではないか、といぶかりつつ、家康は笑みを浮かべて返した
家康「織田の舅殿としては、そなたともっと近しくなりたいのであろうの」
信康「それは難しゅうございますよ。あの方は常なる人ではございませぬ。私は人の子にございますゆえ」
小姓頭の小五郎が頼みたいことがあると万千代に声をかけてきた
連れていかれたのは、穂先や矢尻が鎌び、あちこちが傷んだ槍や弓、矢などが山積みになった蔵だった
小五郎「お主ら、槍の手入れはできるか」
万千代「できぬ武家などおらぬと思いますが」
小五郎「井伊というのは戦はからきしの家、逃げ回っておるばかりじゃったと聞いておったゆえ。槍など使うたことがないのではないかと 思うてな 」
万千代「それはここ年ほどの話、井伊は古くは八介!武門の井伊といわれたお家にございます!」
小五郎「悪かった悪かった。では頼んでもよいか?われらはほかの役目もあってな」
明らかに仕事を押しつけようとしているのが分かったが、万千代は武具の手入れを引き受けた。すべて完璧に直せば、それなりの働きということになろう
万千代「あのような雑魚ども、小姓に上がればあっという間にごぼう抜きにして、あごで使うてやる」
戦いは、5月21日未明に火蓋を切った。徳川の別働隊が、長篠城を囲む武田軍を背後から奇襲
血気にはやる勝頼は、日の出を待って軍を動かし、設楽ヶ原へ突撃させた。その騎馬隊が馬防柵に達しようとしたまさにそのときー、無数の鉄砲が火を噴き、武田の将兵はなすすべもなく次々に倒れていった
ここで信長は全軍に総攻撃の命を下す。信玄以来の名将の多くが戦死し、最強と呼ばれた武田軍は崩壊
勝頼は、わずか数騎の従者とともに敗走した
長篠の戦いは徳川・織田軍の圧勝に
圧勝に終わった長篠の勢いを得て、家康は、武田方となっている遠江の諸城に攻めかかる。戦いの数日後、浜松城の蔵に、使者の大きな声が鳴り響いた
使者「できておる分でかまわぬゆえ武具をまとめよ。急ぎ、兵糧・武具を届けよとのお達しじゃ!」
万千代「……き、来たあーーーーー!」
こつこつと作業を続け、武具の修繕と手入れはほぼ終わっている。命じられるまま万千代たちは、重い兵糧の荷をまず城の庭へと運んだ。そこで見たのは、家臣のもとへ武具を運んでくる小五郎らの姿だった
使者「なんと!これほどに蓄えてあったか」
小五郎「はい。かようなこともあろうかと、昼夜を徹し。それがしも、陣中にお届けしたく存じます!」
万千代「われらもお連れくだされ!その槍弓を直したのは、私と万福にございます!」
小五郎「井伊殿。気持ちは分かるが、偽りはようないぞ。今川の、しかも潰れた家の子。何から何まで己の働きとし、お目に留まりたいのはよう分かるが」
小五郎はその場を離れた。怒りのあまり追かけようとする万千代を正信が止めた。
正信「言っても無駄にございますよ。あれは酒井の一門の輩。立場が悪うなるだけにございます」
万千代は勢い余って正信を殴ってしまった…
正信「向こうが徳川での権勢を誇る家の子を強みとしてくるなら、こちらは今川の国衆の、しかも潰れた家の子であることを強みとしてはいかがです?さすが潰れた家の子、いやあっぱれ!そう言わせるのです」
万千代「ではノブは、さすが裏切り者と言わせるのか」
正信「もちろん、そのつもりにございます。殿がかようにはみ出し者の私どもを迎え入れたのには必ず意味があるはずです。殿を信じ、いつか時が来るのを待ち……、バッと前に出るのです」
正信の言葉は胸にしみた
家康の寝所へ呼ばれる万千代
各地で転戦を重ねていた家康と将兵たちが、数か月ぶりに城に戻った。ささやかな宴が催されたその夜、玄関の掃除をしていた万千代は、とんでもない言葉を榊原康政からささやかれた
康政「急ぎ殿の寝所へ」
寝所?
万千代「粗相のないようにな。着物も取り替えるよう」
康政はそそくさと立ち去った。ごくりと唾をのみ、万千代はすぐそばで口を開けている万福を見た
万千代「これはその、そういつこと、なのかの。徳川の殿は、そちらは好まぬとお聞きしておったのじゃが」
織田家の前田利家、森可成などは、主君と契りを結んだうえでの出世だったと聞く
万千代「これこそが、酒井の一門を追い落とすためにみ仏がくださった好機だ。万福、新しいふんどしを持て!」
覚悟を決めて家康の寝所に赴いた万千代は、あっさりと肩透かしを食らった
万千代「ち、違うのでございますか?榊原様に着替えて寝所に伺うようにと言われ」
家康「あまりにも汚れておったゆえにであろう。あの槍弓を整えたは、そなたと万福か?いつもよりずいぶんと細かく手入れされておったゆえ、新しく入った者がやったのではないかと思うてな。草履棚も様変わりしておったし。そなたのことじゃ。日本一の留守居と言うたら、日本一の留守居を本気でやろうと思うたのではないか?」
やはり殿は、見てくださっていたのだ……。目尻に浮いた涙を拭う万千代に、家康はこう続けた。
家康「いっそ、まこと色小姓としてしまうという手もあるか」
万千代「えっ!」
しのぶの一言
今回は万千代の派手な顔芸というかリアクションに笑いっぱなしでした。正信もいい味をだしていますよね(笑)そして信長が怖すぎ…
留守居を頑張った万千代は、次回からはやっと小姓へあげてもらえるよう
今日(10/22)は日本列島に台風が上陸して大荒れの天気なのですが、井伊谷でも雨で土砂崩れが起き始めているみたいでしたね。長篠の戦いのためにたくさん材木を切ったのが原因かもしれません
来週はそのあたりもでてくるかも…
◎各回のあらすじはコチラ ➡「おんな城主 井伊直虎 」あらすじ一覧
◎前回のあらすじはコチラ ➡ 第41回あらすじ