放送 毎週日曜 総合テレビ 午後8時より
BSプレミアム 午後6時より
再放送 毎週土曜 総合テレビ 午後1時5分より
毎回一話ずつあらすじ、詳細情報、ひとこと(感想)を書いてますので、よかったら読んでいってください。
前回までのお話と第7回のゆくえ
亀之丞が井伊谷に帰還を果たし、直親という名を与えられ井伊の家督を継ぐことになります。
直親は次郎と一緒になることを望みます。次郎も一度はこれを了解したものの、よくよく考えこれを断ります。
直親はしのと夫婦となりした。
第6回では、直親の帰参と家督相続のお許しを得るため出された条件として、井伊の検地をするとの下知がくだります。
ちなみに検地にくるのはキム兄こと芸人の木村祐一さんです。
詳細情報
ネタバレを含みます。
まだ詳細を知りたくない方は読まない方がよいでしょう。
井伊谷の秋
次郎がひと仕事終え歩いていると、井伊の館のほうから笛の音が聞こえてきた。
思わず足を止めた。
笛を追いかけるようにポンと鼓の音がした。
直親の笛に合わせて鼓を打っているのは、新妻のしのであろう。
井伊谷の田んぼでは収穫が始まっていた。
今川の下知
駿府の今川館に政次と左馬助が来ていた。
直親の帰参と婚姻についての報告する為だ。
義元の側近「謀反人の息子の帰参と家督相続を認めよ──そう申すのか」
左馬助「おそれ多くも、かの者の父がご太守様に弓を引きましたのは、北条様との御諍いごとが始まり。めでたくも先年、今川・北条ご両家はご同盟を結ばれたよし…」
義元は扇の影で側近に何か耳打ちした。
義元の側近「井伊の姫と添わせるつもりかと仰せである」
左馬助「め、めっそうもないことでございます!」
政次「井伊の姫と添わせるは太守様の恩情をむげにすることと、遠縁の奥山の女をと……」
今川義元が直親の帰参と家督相続を認める代わりに出した条件は、検地だった。
*検地とは、
領主が所領を把握するために行うもの。
指出とは、持っている田畑の広さや、取れ高、村の人数などを記したもの。それを基に賦役や軍役を課していた。
評定にて義元の下知を伝えると、
直平「とわの還俗も願い出ればよかったのに」
政次「井伊の姫と添わせるつもりかと、わさわざお尋ねがありました。」
直平「わしの川名を地検なぞされたら、たまったもんではないわ!」
直由「川名は井伊の最後の砦じゃ! それを敵の目にさらすなど言語道断!」
直平「一歩でもあそこに立ち入ろうものなら、血の雨が降ることになるからな!」
直平と直由は続けざまに立ち上がり立ち去って言った。
直親は直盛に尋ねた。
直親「じじ様は何故、あそこまで検地を嫌がられるのでございますか?」
直盛「じじ様の治めておられる川名には、隠し里があるのじゃ」
直親「……殿。それがし、隠し里を一度見に参ってもよろしいでしょうか」
川名の隠れ里
川名は、山あいのひなびた里である。
案内役の直平はある分かれ道まで来ると馬をつなぎ、徒歩で山の斜面を登り始めた。
急な勾配なので馬は登れないのだ。
そうしてたどりついた隠し里は、斜面一面の棚田で、豊かな実りを見せていた。
直平「ここは、もしものときに井伊の民が逃げ込むところでな。かつて、今川に追い込まれたときもわしらはここに隠れ住み、時を稼ぎ、命脈を保ったのじゃ。ここがなければ、井伊は滅びておったかもしれぬ」
直親「……賦役が増すのがお嫌なだけではないのでございますね」
直平「さような了見の狭い話ではない。ここは文字どおりの最後の砦なのじゃ。今の今川は強い。その下におれば、われらは安泰じゃ。しかし、それがいつまで続くかは誰にも分からぬ。そのときに、誰が一体、井伊を守ってくれるというのじゃ」
井伊の館に戻った直親は、隠し里を隠し通すという自分の考えを直盛と左馬助に伝えた。
井伊は正式な地検は初めてであること、差し出した絵図にも、この里のことは記されてない事をあげた。
直親「川名は遠方にございます。お役人もそこまで足を延ばされぬかもしれませぬし、延ばされたとしても案内にてかわすこともできましょうし……抱き込むという手もございましょう」
直盛はどうしたものかと考え込んでいる。
直親「そもそも検地を被りましたのは、それがしの帰参をお許しいただいたがゆえ。それが故に、井伊の最後の砦を失うなど、耐え難きものがございます。川名の件は、何とぞそれがしにお任せいただけませんでしょうか」
直親は次郎のところにやってきた。
地検に来る役人の好みのものなどを探ってほしいと頼みにきたのだ 。好みのもの、困っていること、弱み。要するに、その方々を抱き込むにはどうしたらよいかを知りたいのだと。
直親「次郎様には、今川館に子どもの頃より出入りしておられる友がおると聞いてな」
関口家の姫の瀬名のことで、次郎の大叔母・佐名の娘である。
次郎「……分かった」
直親「ありがたい。恩に着るぞ、竜宮小僧!」
直親が家に帰るとしのがお寺に行っておられたのですか?と聞いてきた。
直親が度々お寺に行き次郎に会っていることについては、しのは心中おだやかではなかった。
なぜなら次郎は前の許嫁なのだから。
翌日、直親は川名へ向かい、直平と共に隠し里の隠蔽工作を始めた。
その一方、ほかの地でも検地の準備が行われていた。
政次「この指出では、この村が半分もないことになっておりますが」
直由の持ってきた土地台帳に目を通した政次は、あきれて言った。
直由「それがしはそうは思わぬ!!」
そんな理屈が通るとでも思っているのだろうか。
政次「中野殿、すべてを正直にとは申しませぬ。ですが、あまりな噓を書けば、今川は私により厳しく検分をせよと言われ、小野の力がいや増すばかりにございますよ」
ふてくされている直由に台帳を差し返すと、ひったくるようにそれを受け取った。
直由「今川にばかり尻尾を振りおって」
玄蕃「目付も大変にございますな」
政次「いつものことじゃ。それより川名は?」
玄蕃「川名はまだ、指出が来ておりませぬな」
それを聞いて、政次は思案顔になった。
直親が次郎に会いに、再び寺にやって来た。
駿府の友から返事は来てないかどうかを聞きにきたのだが、返事はまだ来ていなかった。
次郎は政次このことを話したのか気になっていたので聞いてみた。
次郎「この話、政次が『隠そうとしている』と役人に話してしまえば一巻の終わりではないのか?」
直親 「……政次は、俺と同じように思うておるところがあるような気がするのじゃ。決して、己の父親のようにはならぬ、と。そこに賭けてみようかと思うておる」
甘いかのと直親がほほえむ。
次郎「……いや。われも、鶴はそう思うておると思う」
次郎の言葉を聞いてうれしそうに笑った。
その夜、直親は小野の屋敷へ足を運んだ。
直親「川名の指出を持ってきた」
政次「拝見いたしまする。……隠し里の分が欠けておるようですが」
直親「うむ。それはこちらにある」と別の台帳を出してきた。
政次「何故、お分けになって」
直親「結論から申せば、こちらは出さずにおきたい。つまり、川名の隠し里を『ない』ことにしてしまいたいのだ」
直親「だが、鶴は今川の目付という立場もあろう。隠していたことが露見したときに、今川より落ち度を責められるのは小野だ。
そして、そうなった小野を井伊は守りはせぬであろう。だが、今川もまた小野を駒としか思うておらぬ。ここが小野の苦しいところなのであろう。その生きづらさは、俺には測りかねるところがある。
そこで──一案だ。もし、鶴が隠すことに加担したくないと思うなら、この冊子を付けて出してくれ。もし、ひと肌脱いでくれるというなら、そのまま破り捨ててくれ。俺は鶴の決めたほうに従う」
では、よろしく頼むと言い残しして直親は帰っていった。
政次「先回りしおった。やつめ、俺の了見を見越したうえで、最後は俺に決めよと言い放ちおった……俺に決めよと!」
玄蕃「何を怒っておられるのですか?」
政次「分からぬ! 分からぬが無性に腹が立つのだ!」
玄蕃「直親様は兄上を信じておられるのだと思いますよ。最後は井伊のためを思ってくれると。でなければ、かようなことはなさなぬでしょう。竹馬の友とは、よきものにございますな」
政次「…..」
政次はしばらく2つに分かれた台帳をみつめて思案にくれていた。
翌日、政次は今川に提出する台帳を持って井伊の館を訪れた。
政次「直親様、指出をおあらため願えますか?」
直親が、一冊ずつ確認していく。そこには、例の隠し里の分はなかった。
政次「昨夜、破り捨て申した」
直親「……但馬、恩に着る」
検地
検地奉行の岩松は無愛想で、見るからにとっつきにくそうな男である。
直盛「では、岩松殿、おあらためください」
土地台帳を差し出す。
岩松は提出された台帳と所領を見比べるべく、ひと休みする間もなく、井伊谷の村を回り始めた。
岩松に目くばせされた配下の一人が、道具箱から幾重にも巻いた縄を取り出した。
直親「縄で何をされるので?」
岩松「田畑の寸法を正しく測るのでござる」
政次 (小声で)「やりにくい相手じゃな」
想像の上を行く真面目で堅物そうな男である。
岩松「指出より、一反ほど大きいかと思われまする」
直親「どうぞ、お改めくださいませ。お手数をおかけいたします」
その日の夕刻は、岩松一行のためにごちそうが用意され、酒宴が催された。
しかし岩松はお酒を一滴も呑もうとはしない。明日は朝一番に川名へ経ちたいので酒は遠慮したいというのだ。
一方次郎は、政次が俺の思うよう上手く運ぶようにと祈願しにきたことが気になっていた。直親と政次の考えは同じなのだろうかと。
心配になり、夜に政次の屋敷を訪れた。
次郎「こたびの検地は、亀の味方をしてやってほしい。亀は、鶴のことを信じておる。どうか、その気持ちを裏切らないでほしいのじゃ」
政次「亀に言われて来たのか?」
次郎「違う! われは、その、亀の役に立ちたくて……勝手に来たのじゃ」
政次「では、還俗して俺と一緒になるか?」
次郎「え……?」
政次「次郎様は、俺の立場ではものを考えぬお人であるらしいが、俺はあいつのせいで二度も好機を失っておるのだ。
一度はあいつゆえにおとわ様が出家をし、もう一度は、あいつが戻ってきたせいで、よい話を失った。
味方をするのはやぶさかではないが、俺も俺で、もう取りっぱぐれは願い下げでな」
次郎「それは…」
政次「なんの覚悟もないのなら、寺で経でも読んでおれ」
政次は部屋を出ていった。
次郎「……鶴!」
しばらくして、玄蕃が困りきった様子で政次の部屋にやって来た。
玄蕃「もう一度、兄上と話をさせてくれるまで動かぬと。いかがいたしましょうか」
政次 「放っておけ」
次郎は一人、部屋で夜をあかした。
次の朝、次郎は小野の屋敷を出て井伊の館へ向かった。
駿府より瀬名からの文が届いていた。
文を読んだ次郎は馬を借り、直親を助けに参ります!と言い放ち飛び出して行った。
ちょうど部屋を出てきたしのはその様子をみて泣き出してしまった。
なぜ夫の直親は次郎の関係はいったいどうものだろうと。
ーーー瀬名からの手紙ーーーーーーー
『次郎様。お返事が遅くなったこと、お詫び申し上げます。
検地奉行の岩松殿は、歌会や鞠会などにもお出にならぬ変わり者で、好みのものなど尋ねても、皆、「知らぬ」「存ぜぬ」と。
なれど、変わり者は変わり者と馬が合うらしく──』
竹千代が時折、岩松から算術を教えてもらっているという話が、瀬名の耳に入ってきたという。
『その三河のぼんやりが申すことには、岩松殿のこよなく愛するものは数と算術、それと「亡くなられた奥方様」』
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
川名の里では、直親の立ち会いの下、岩松の指揮で検地が始まっていた。
直平「何故、ここまでやって来ておるのじゃ。おぬしの差し金か」
政次 「私が連れてまいったわけではございませぬ」
直平の小野に対する嫌悪には、政次もほとほと嫌気がさしている。
岩松の配下「里はこちらにて終わりですか」
直親「はい、こちらのみで…」
岩松はいったんうなずいたが、ふと山の斜面に目をやった。
その目線の先は、まさに直親と直平が細工をした隠し里の入り口である。
岩松はずんずんそちらへ歩いていく。
直親「岩松殿! そちらは違いまする! そちらは何もございませぬ!」
直親が追いかけていく。
政次と直平があわてて駆け寄っていったが、そのときには、すでに岩松配下の者たちの手によって入り口が暴かれていた!
岩松の配下「直親殿。この棚田の里は、指出には一切ござらぬようじゃが。いかがなこと!」
岩松「これは、この井伊の里ではないのか?」
そこへ次郎が到着し、一同の後方にいる直平の隣に立った。息をのんで成り行きを見守る。
岩松の配下「まさか、われらをたばかろうとしたのではあるまいな!」
もはやこれまで……うまい口実を付けて隠し里の台帳を渡すしかないと、政次がさっと胸元に手を入れる。
それに気づいた直親が前へ進み出た。
直親 「この里は井伊のものではございませぬ! 故に、この里は指出に入っておらぬものと存じます!」
政次は取り出しかけた台帳を懐に戻した。
岩松 「では、ここの里はどこのものじゃ」
直親「そこは、何分帰参いたしたばかりでございまして……。但馬、ここは井伊の里ではないのであろう?」
突然、振られた政次は直親の意図が見えず、とっさに返事ができない。
直親「指出を渡したときも、何も言うておらなかったが」
直親がそう言うのを聞いた瞬間、政次は頭の芯がカッとなった。
政次 「……ここはかつて、南朝の皇子様が隠れてお住まいになられていた里にございます。故に、かねてより井伊の中にありながら、井伊領にあらずという扱いにございます」
岩松「心得申した」
気まずそうにしている次郎に岩松が気付いた。直親は次郎が龍潭寺の僧であることを伝えた。
次郎「あ、あの、駿府の瀬名姫より、本日は岩松様の奥方様の月命日であると伺いまして。こたびは井伊までのお出向き、きっとご供養もおできになっていないのではと思い、私でよろしければ、経などをあげさせていただこうかと……」
隠し里に、次郎の歌うような経の声が響きわたる。
岩松「これは……。妻も喜んでおりましょう」
直平「それはようございました」
翌日、直親は井戸端に呼び出され、政次が破り捨てたと言った隠し里の台帳を渡された。
直親はこの台帳をどう使うつもりだったのが政次に聞いたがはぐらかされてしまった。
直親「怒っておるよな」
政次「いえ。それがしを信じておられるのなら、おられぬでかまいませぬ。されど、信じているふりをされるのは気分がよいものではありませぬ」
直親はその場を立ち去ろうとした政次の背中に向かって言った。
直親「井伊を守るのは、おとわのためだと思うてはもらえぬか。井伊のためにすべてを捨てたのはおとわだ。おとわのために、共にこの国を守っていこうとは思うてもらえぬか」
政次の足が止まった。
政次 「……お前のそういうところが好かぬ」
夜、直親は直盛と千賀に呼ばれた。しのと山向こうの祝田村へ移るとよいと提案された。
千賀「目と鼻の先に次郎がおるのは、酷だと思うのです。」
直盛「子じゃ。さっさと子を作れ。子ができれば、しのとお前の間にも別のきずなが出来ることになる。」
直親はうなづくことしかできなかった。
政次の弟・玄蕃に、しのの妹のなつが輿入れすることになった。
小野を親族に取り込み、和を作りたいという直盛の策である。
同じ頃、今川では、三河の旧領主である松平を完全に取り込むべく、ある縁組みが行われた。元服を終えて元信となった竹千代と瀬名である。
しのぶの一言
直親と政次の鶴亀合戦が始まってしまったという感じですね。
三浦春馬さん演じる直親の若武者姿は眩しいくらいなのですが、やってることは結構ズルいかも。自分でやらせてくださいと言っておきながら、土壇場で政次に振るとは〜!
政次(高橋一生)が静かにそしてふつふつと怒りを爆発させるのが、コワかった…。メッチャ怒ってましたよね。この先が心配だ…。