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放送 毎週日曜 総合テレビ 午後8時より
BSプレミアム 午後6時より
再放送 毎週土曜 総合テレビ 午後1時5分より
毎回一話ずつあらすじ、詳細情報、ひとこと(感想)を書いてますので、よかったら読んでいってください。
前回までのお話と第8回のゆくえ
直親の帰参と家督を相続を認めるかわりに今川から地検を受け入れることになった。
井伊領内の川名には実は隠し里があった。この里を隠し通すために隠蔽工作をするが、今川の地検奉行、岩松に川名を暴かれてしまう。
窮地に立たされた直親は突然、政次に説明を求め、政次は驚きながらもこれをなんとか切り返した。そして次郎法師の機転をきかせた心使いも功を奏して、岩松一行は納得して今川に帰ってくれた。
しかし、直親と政次の間には亀裂ができてしまった。
今回は、直親としのの間に子ができず、側室話が持ち上がる。そして、思い詰めたしのがとんでもない行動にでてしまう。
そして、戦支度も始まる。
詳細情報
ネタバレを含みます。
まだ詳細を知りたくない方は読まない方がよいでしょう。
子を授かる薬はないのか?
次郎法師は瀬名からの手紙を読んでいた。
元康と夫婦になり二年。春には長男・竹千代が生まれ、時を置かずして、またもや授かったということ。
竹千代はよく笑う赤ん坊でかわいくてしかたないらしい。でも重いつわりには苦しめられてげっそりしていること。
夫の元康殿はぼうっとして口数が少なく、何が楽しいのか、暇があれば一人で延々碁を打たれ、何が腹立たしいのか、己が己に負けてかんしゃくを起こすこともあるそう。
でも夫婦仲はよさそう。次郎は手紙を読みながらおもわず微笑んだ。
ふと、突き刺さるような視線を感じ振り向くと、しのが、じっとこちらを見つめている。
今日は、子宝祈願の経を南渓にあげてもらいに龍潭寺に来ていたのだ。
しの「今、私のことをお笑いになりました?」
次郎「いえ」
様子がおかしかったので、次郎は南渓に訳を聞いてみた。
南渓「子ができぬのをかなり気に病んでおるようでの~。直親と夫婦となり早四年。授かる兆しもあらわれぬとなればの」
次郎は、昊天に何か子を授かれるよい薬はないか聞いてみることにした。 博識の昊天は薬草にも詳しく、寺領内には薬草園まであるのだ。
昊天「川芎、当帰、淫羊藿……子を授かる作用があるとされているのはこの辺りですが、すでにお使いでいらっしゃるのではないですかね」
次郎「そう思います。何かほかにはないですかね」
昊天「麝香(じゃこう)がありますが、唐渡りのもので、井伊谷では手に入りませぬ」
相当に値は貼るが、駿府でなら手に入るらしい。手元にお金がない次郎はどうしたらよいか考えた。
そして、子供の頃にもらった鼓を売るを思つく。親族に頼むとなにかと面倒なので、政次に鼓を売って麝香を手に入れてもらうことを頼んだ。
恥を知れ!
左馬助と政次が駿府へ。

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駿府では、すでに三河を手中に収めた今川義元は、その先の尾張侵攻に本腰を入れるため、家督を息子の氏真に譲り、駿河と遠江は氏真の管轄となっていた。
氏真から ”井伊は春までに槍を二百本作るように” というお達しを伝えられる。
駿府から戻った左馬助からの報告を聞いた直盛は織田との戦いになることを想定する。
それを聞いた直親は、初陣に出れるかと期待に胸を膨らませる。
しかし大事な跡取りを戦に出すことにはできぬと直盛がやんわりと制した。
直親は不服だったようで、負けようのない戦であること 、修練を積んできたことを主張した。
そして、最後は政次が割って入った。
政次「跡継ぎがおらぬ状態で戦に出すわけにはいかぬということです。直親様にもしものことがあれば、井伊の家中はまた混乱することになりますので」
しばし口を引き結んでいたが、すまなそうにしている直盛のことを気遣ったようで、直親は承諾した。
一方、次郎は政次が駿府で買ってきてくれた麝香をしのへ渡すために祝田の直親の館にやってきた。
次郎 「渡りの、子が授かりやすくなる薬でな。女子がのむとよいそうなので、試されてみてはいかがかと」
しのはにべものなくこれを断った。
次郎が愛想よく勧めてみるうちに、しのは涙をためて、
しの「次郎様は、私が子が授からねばよいと思うてらっしゃる方ではないですか。さようなお方のお薬など・・・。」
次郎「私が子ができぬ薬を盛る、と、そう言うておられるのか」
次郎はあまりのことに驚いた。
次郎 「私がこの四年間、そなたと直親殿の邪魔をしたことが一度でもあるか」
しの 「かように授からぬのは、子ができぬよう、すでに呪うておいでではないのか!」
さすがの次郎も堪忍袋の緒が切れた。
次郎「恥を知れ!
情けない。さすがにあまりにも情けないお言葉。そなたはそれでも、直親殿の、井伊の奥方様なのか!」
次郎は怒鳴った。
次郎「今日のこと、父上と母上に申し上げる!いかなる沙汰が下されるか、お覚悟されるがよい!」
しのは慌てた。
しの「次郎様! どうかっ、どうかそれだけは! それだけはご勘忍くださいませぇ」
しのと次郎はもみ合いとなった。しのがよろけて転倒した。
振り向くと、次郎の後方に帰宅してきた直親が立っており絶句していた。
ひとまず次郎は退散した。
どうなる側女話
その夜、直親が謝罪に訪れた。そして直親の口からこんな言葉が出た。
直親「側女を持とうかと思うておる。」
直親「さすがにこのまま子を授かれなかったでは、井伊の皆様にも申し訳が立たぬし、子を残すのは俺の役目でもあるし」
次郎「そのとおりなのであろうが、今のしの殿に受け入れられるのかの。あのありさまで」
直親「……お家のためじゃ。受け入れてもらうしかあるまい」
直親はため息をついた。
翌日、直盛と千賀の元に、直親が側女の件をみずから進言しに来た。
千賀は、良い女子を探さねば!と乗り気になってくれた。
こうして井伊家中では、直親の側女探しと戦支度が並行して進められていった。
祝田の館では、朝利に側女のことを知らされたしのは暗い顔をした。
朝利「さすがにもうこれ以上待てぬとの仰せでな。わしもつらいが、なんとか聞き分けてくれ」
しの「……父上、どのような女子でございますか?」
朝利「奥山の遠縁の女子でな。若いが夫を亡くしての出戻りらしい」
側女を探してきた千賀の話では、快活でさっぱりとした気性だという。
しの「何故、そのお方が選ばれたのでございますか」
朝利 「前の嫁ぎ先で子を二人も産んだそうじゃ」
しの「……さ、ようで」
しのはぐずぐず泣き始める。

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朝利 「しの。そなたもこのあと授かるかもしれぬし、側女に子が生まれたとて、正室はそなたじゃ。さすがにもう少し毅然とせねば、直親殿にも見限られるぞ」
朝利 「ではの。」
朝利は帰っていった。
部屋に取り残されたしのは、しばしぼんやりとしていた。そして呟いた。
しの「……あの女のせいじゃ」
女のバトル
龍潭寺の次郎の元へ、直親の家老・藤七郎が慌ただしくやって来た。
次郎「藤七郎、何かあったのか?」
藤七郎「奥方様が姿を消されて。こちらには来ておられませぬか?」
次郎「見ておらぬが」
藤七郎「そうですか。実は、かような書き置きを残されまして」
そこには、こう記されてあった。
『次郎殿 お恨み申し上げます』
次郎はだんだん腹が立ってきた。私も探すと言い寺を出て行った。
そして井戸端にいるしのを見つけた。
しのは青ざめ、懐剣の鋭い切っ先を凝視している。いざとなると躊躇してしまうらしい。そして、目をつぶり首筋に刃を当てた。
次郎は大股で近づくと、しのの手首をがっとつかんで言った。
次郎 「離されよ」
しのは力いっぱい抵抗する。
次郎「いいかげんになされよ! なぜ、ここまで私をお恨みなさる! 私はそなたにここまで恨まれるようなことは何もしておらぬ!」
しの「口には出さねど、殿もお方様も、屋敷の皆も……直親様も。しのがおとわであったなら、と。それでも、子ができれば変わる。きっと皆、見直してくださると、一日中子をつくることばかり考え……なれど、ただ一人にも恵まれず……」
そう言うとボロボロと涙をこぼす。
しの 「悪いのは、私ですか? 私は……ほかに誰を恨めばよいというのですか!」
しばしその様子を見ていた次郎は、取り上げた懐剣をしのに放り投げた。
次郎「分かった。そこまで言うなら、ご自害なされよ」
しの「えっ?」
次郎「正室が亡くなり、もう誰もふさわしい者がおらぬとなれば、さすがに私の還俗も認めていただけるかもしれぬしの。
ちょうどよい薬も手元にあることじゃし、すぐに跡継ぎにも恵まれよう。そうじゃ、それがよい。私がそなたの後釜に座るゆえ。ほれ、早うお取りなされ」
しのの目が怒りに満ちてきた。そしてつぎの瞬間、しのは懐剣を両手で構え、次郎に突進してきた。
次郎が慌てて逃げ出すと、茂みに潜んでいた傑山が飛び出してきて、しのを羽交い締めにした。
しの「私は必ず、必ず子を産んでみせまする!決して、そなたをかんぞくなどさせませぬ!」
大泣きしながら次郎に向かって言い放った。
ふと見るといつのまにか直親がいた。
直親「藤七郎から騒ぎをきいてな。すまぬ。」
とため息をついた。
次郎はカッとなって怒鳴った。
次郎「ため息をつくな! あれはそなたの女房であろう! なぜ、いつもさように他人事なのじゃ!
子は二人でつくるものであろ? なぜ、もっと共に悲しんでやらぬのだ。悩んでやらぬのだ。なぜ、しの殿はかように独りなのじゃ!」
直親がハッ!とした顔になる。
次郎 「……そなたの女房なのだから、そなたがなんとかせよ」
袂から麝香の小箱を取り出して直親に投げつけると、次郎はくるりと背を向けその場を去った。
直親は小箱を拾い、傑山に慰められているしのをしばし見つめてから、思い決めたように妻のほうへ近づいていった。
直親「しの。つらい思いをさせ、すまなかったな。……少し、話さぬか」

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そのあと、次郎は直盛と千賀のところにいってこう宣言した。
次郎「あの女は私を逆恨みしたあげく、刺し殺そうといたしました!
恐ろしい女子にございます!
もし新しい側女が来れば、必ずや私と同じ憂き目に遭いましょう!
なれど!もし母となった暁には、躊躇なく敵を刺し殺す心強き母になりましょう!」
翌日、直盛と千賀の元に直親としのが二人でやってきた。
直親「まことに勝手な話にございますが、側女の件、あと一年だけお待ちいただくことはできませんでしょうか。
あと一年、なんの兆しもなければ、しのも心積もりをすると申しております」
この年の5月、今川義元より井伊家に、尾張へ出陣の命が下った。
井伊軍を率いるのは、当主の直盛。
留守の間、家中を預かるのは直親と中野直由で、左馬助と政次らも同じく井伊谷にとどまる。
尾張の織田勢3千、対する今川勢は2万5千。
誰もが今川の勝利を疑わなかった「桶狭間の戦い」は、こうして始まったのである。
しのぶの一言
いつの時代も子どもができないと、女のほうが責められるんですよね・・・(ため息)
でも城主の家督を継ぐ立場であれば、そのプレッシャーはとてつもないものだったのでしょう。
そりゃあ、しのが頭おかしくなるのもしょうがないかも。
そして、とばっちりを受けた次郎の怒りはごもっとも。
そんな中で、次郎が最後に直親にガツンと言ってやったのはよかった。
自分も殺されかけたのに、しのへの思いやりを持っていて感動!
さすが竜宮小僧ですねー!