徳川軍が井伊にやって来た!
井伊を復興するのチャンスがやってきたのだ!
ところが、入城しようとした時に、何者かが弓を射掛けてきたものがいる
直虎はとっさに門を閉めるように命じ、政次に逃げるように叫ぶ!
前回(第32回)のお話をサラッとおさらい
井伊家はお取り潰しとなった
しかし、水面下では徳川が攻めてきたら開城し、徳川の配下となる密約が交わされていたのだ
そうして、徳川軍がやってきた
第33話 2017年8月20日放送
ネタバレを含みます
まだ詳細を知りたくない方は読まない方がよいでしょう
会話多めで書いています
徳川軍の入城と不穏な動き
近藤の手勢がなだれ込む寸前に井伊谷城の門は閉じられた
近藤「これはいかなることにございますか。手向かいはせぬとのお約束では!」
直虎「しておらぬ。あれは井伊の者ではございませぬ」
近藤「では、誰がやったと言われるのじゃ」
直虎「井伊の者ではない!」
忠次「とにかく、門を開けられよ」
忠次「開けられよ!話はそれからじゃ!」
直虎それ以上の抵抗はできなかった
城内に政次たちの姿はなかった
直虎は話し合いをすべく、近藤と忠次に陣で相対した
直虎「こちらが徳川様じきじきのご書状です。お約束どおり、井伊は城を明け渡しました。つきましては、こちらにあるよう、井伊領を安堵し、家名を再興させていただきたく存じます」
近藤「手向かいをせぬことと引き換えに、であろう。矢を射かけておきながら何を」
直虎「井伊はやっておりませぬ」
近藤「では、先ほどのあれはなんじゃ!」
直虎「恐らくは今川方の野伏が潜んでおったのではございませぬか?もしくは、井伊がやったと見せかけたいどなたかが、謀られたのやもしれませぬ」
近藤「話にならぬ!」
直虎「酒井様、お心当たりはございませぬか」
忠次「但馬守とやらがやったのではないか?今川の犬だという話ではないか」
直虎「但馬が井伊家を乗っ取ったというのは今川への見せかけ。その話もお伝えしておったかと存じます」
忠次「そこも含め、だまされておったのではないかの?そのほうの話に乗り、徳川につくと見せかけ、その実わが殿の寝首をかこうなどと」
直虎「ならばなおさら、あのような折に戦を仕掛るなど愚かなことはいたしませんでしょう。城を明け渡し、一服盛るほうがよほどたやすい。但馬ではございませぬ!」
近藤「しかし、但馬は逃げたではないか!」
直虎「私が逃しましたゆえ」
近藤「ほお、では井伊殿も共に寝首をかこうと……」
直虎「人は襲われれば身を守るもの。乗り込んでこられては、兵はおのずと抗いましょう。但馬は謀っておりませぬし、井伊はとがめ立てされる筋もお許しいただく筋もございませぬ!約束どおり井伊を再輿していただきます!家康公にお取り次ぎを!」
にらみ合っているところへ、早馬が駆けてきた
“申し上げます。武田より使者が参りました”
家康の判断
家康に井伊谷三人衆から入城まえに兵が襲われたことを報告された
そして直虎は、但馬を逃したため、牢に入れられていた
家康は三人衆を下がらせた
家康「この騒ぎ、あの者たちが謀ったということはないか。どうにもうさんくさい」
忠次「殿、しばらく……。武田よりこれが参りました」
忠次が書状を差し、家康は目を通した
家康「武田はすで駿府を落とし、氏真は掛川に逃げ延びた由。急いで掛川を攻めよとのことじゃ」
忠勝「遅れれば、武田は遠江まで切り取り参るやもしれませぬ。このもめ事に手間取っておる時ではないかと…」
家康は家臣たちを無視して、牢に向かった
直虎が牢にいると、目の前に一人の侍が立った
もしや?と思い直虎は声をかけた
直虎「……徳川様?徳川様でございますか?」
直虎「こたびのこと、神明に誓いまして、われらは徳川様を襲ってなどおりませぬ。徳川様の軍勢には決して逆らってはならぬと、民百姓にまできつく言い聞かせておりました」
無言ではあるが、聞いてくれているようだ
直虎「今川の野伏か、または、考えたくはございませぬが…近藤殿に謀られたのやもしれませぬ。どうか、徳川様の手でお調べいただけやせぬでしょうか」
突然、その侍は直虎に向かって土下座をした
直虎「……それはいかなる意味にございますか。いかなる意味かと訊いております!お手を上げ、お答えくださいませ!」
直虎「あなた様が指図でき鍛ことなどございますまい!ご自分で書かれたことを、とを すぐお命じくださいませ」
侍はそのままの姿勢でずりずりと後ずさり始めた
直虎「待たれよ!徳川様!お待ちあれ!待たれよ!徳川様!」
牢絡子をつかんで必死に叫んだが、返事はなかった
翌早朝、徳川軍は井伊谷を出立した
その背後の安全を期すため、井伊谷には、しばし近藤の勢がとどまることになった
政次となつ
政次はなつと亥之助を連れ、小野や関口の郎党たちと共に隠し里に落ち延びていた
祐椿尼「それで、殿は今……」
政次「城に残って、徳川と談判を続けておいでかと。今はまだ、確かなことはお答えできませぬが」
あやめ「あの、もし、談判がうまく運ばなかった折には、殿は……?」
政次「必ずなんとかいたします」
あやめ「なんとかとは?」
祐椿尼「承知しました。そなたと殿に任せます」
政次「ここは、わが家来にも守らせますゆえ……」
政次は辞儀をして、屋敷を出た
政次が1人でいたところへなつが食事を運んできた
2人は束の間の甘い時間を過ごした
政次はなつに膝枕した
政次「ん?」
政次は頭の下に違和感を覚えて、挟まっていたなつの袖を引っ張り出した
なつ「あ、これは…。義兄上の着物のお袖に入っておったのです」
なつは袖の中から碁石を取り出した
政次「紛れてしまっていたか」
碁石を手に取り、しみじみと見つめる
その脳裏に浮かんでいるのは直虎に違いない…
なつは、政次の目を手で覆い隠した
なつ「……今はなしです。今だけは……」
政次「……はい」
政次はなつに優しくほほえんだ
龍雲丸たちが助っ人にやってきた
そのころ、矢を放った者たちを追っていた直之が、龍潭寺に戻ってきていた
襲ったのは、近藤の手の者だと分かった
顔に見覚えがあったのだ
直之「捕らえて突き出してやろうかと思うたのですが、自害されてしまい……」
傑山が拾ってきたという矢の先は丸まっていて、刺さらないよう細工されていたのだ
どうりで、近藤の配下の者たちにも矢を射かけていたはずだ
南渓は直之にある事を頼んだあと井伊谷城の陣内を訪れ、近藤と相対した
南渓「次郎は今はただの出家にございます。御仏に仕える者を捕らえるとは、あまりにも情けなきご所業。何とぞ、身柄をお返し願いたく」
近藤「それがしもそう思うてはおるのですが、但馬を逃がされたのは尼殿で。徳川様を襲ったにもかかわらず、何もせず捨て置くわけにはいきませんでな」
南渓「では、どうすればお返し願えますかな」
近藤「まことの城主は小野但馬。但馬と引き換えならば、すぐにでもお返し申しあげます」
南渓「次郎めにはよく言うて聞かせますゆえ、まずは会わせていただけますかな」
近藤は面会を許可した
南渓「そなたが但馬を逃がしたそうではないか。どこへ逃がしたか教えてくれぬか」
牢格子越しに直虎と話す
そばに近藤がついている
直虎「知りませぬ」
南渓「しかし、但馬を引き渡せば、そなたは助かるのじゃぞ」
直虎「但馬はやっておりませぬ!何もやっておらぬ者を、何故、引き渡さねばならぬのですか?!」
南渓は牢格子の間から手を入れ、直虎の手を握った
南渓「落ち着け。井伊のため何をなすべきか、落ち着いて考えよ」
そう言うと、手を離した
南渓「考えてみます」
近藤「あまり長く考えられても困りますぞ」
南渓「分かったな、次郎」
直虎「……はい」
南渓と近藤が立ち去るのを見届けてから、直虎はそっと手を開いた
そこには、南渓に握らせられた紙片があった…
一方、龍潭寺では直之が龍雲丸らを連れて到着していた
以前、龍雲丸を牢から逃がした方法で、直虎を救い出そうというのである
龍雲丸「……で、尼小僧様はどこに連れて逃げりゃいいんだ」
南渓「当面は気賀がよかろう。かたじけない、頭」
龍雲丸「んじゃ、暗くなったら、ちょっくら見に行ってきまさあ」
傑山「私は、和尚様は、但馬を突き出すお考えかと思うておりました」
南渓「……政次が死ねば、あれは死んでしまうからな。片翼では、鳥は飛べぬ」
“二人して落ち延び、そこから再起を図ればよい”
牢では直虎が南渓から握らされた紙片を見つめていた
“頭を頼り、そなたを盗み出してもらう但馬と2人、気賀に逃げよ”
紙片には、そう書いてあった
龍雲丸なら、きっとうまく救い出してくれるだろう
それに、政次と一緒なら、井伊を奪還する何かよい策が浮かぶに違いない
そこへ牢に入ってくる複数の人の足音がした
次の瞬間、直虎は大きく目を見開いた
直虎「……政次」
縄につながれた政次が連行されてきたのだ
あちこち傷を負い、相当に痛めつけられているようすだ
近藤の家来「出られよ、次郎法師殿。この者はわが主人を襲うたのじゃ」
近藤「寝所に忍び込まれての」
直虎「どこまで偽れば気が済むのじゃ!」
近藤「偽りではない。ほれ、こちらが刀傷じゃ」
確かに、近藤の腕には斬られたような傷がある。しかし、政次が負わせたものとは限らない
直虎「政次!なんとか申せ!」
政次「……もう少しだったのだがな。もう少しで首を取れたものを」
直虎「……な、何を言うておる!政次!共に徳川と話をしたではないか、共に……」
政次「信じておられたとはおめでたい」
直虎「われはだまされぬぞ。われはもう……」
家来「尼殿をお連れせよ!」
直虎は力ずくで牢から引っ張り出され、代わりに政次が牢に押し込まれた
直虎「政次!返事をせよ!政次!」
牢の中で一人、政次は心静かに座していた
そのとき、牢のほうへ歩いてくる足音がした
近藤「まさか、宇利の山猿に足をすくわれるとは思われなんだか。おぬしは、わしをだましたことなど、とうに忘れておったろうな」
政次「……なんのお話をされておられるのか、分かりかねますが」
近藤「取れるものは取る。取れるときにの。世の習いじゃ。悪く思われるな」
近藤はそう言い残して去って行った
と、出入り口のほうで物音がした
見張りが牢のそばを離れて様子を見に行く
と同時に、後ろから声がかかった
龍雲丸「……行きますぜ」
政次を助け出しにきたのだ
政次「すまぬが、俺は行かぬ」
龍雲丸「え?なんで……あんたがここで打ち首になったとしても、尼小僧様だって、また捕まるかもしんねえと思いますがね」
政次「近藤がかような企てに出たのは、俺と殿への私怨を晴らそうという意味合いもあろう。殿や俺は逃げればよいかもしれぬ。しかし、恨みが晴れなければ、隠し里や寺、虎松様、民百姓、何をどうされるか分からぬ。そして、井伊にはそれを守りきれるだけの兵はおらの」
近藤は、井伊の者を片っ端から血祭りに挙げるだろう
政次「俺の首一つで済ますのが、最も血が流れぬ」
龍雲丸「けど、あんたがいなくなったら、あん人、誰を頼りゃいいんだよ」
政次「和尚様がおるし、そなたもおるではないか」
龍雲丸「ごめんこうむらあ!大体……大体、あんた、それでいいのかよ!このままいきゃあ、あんたは井伊を乗っ取ったあげく罪人として裁かれるってことだろーが。悔しくねえのかよ!井伊のためにって、あんなに!誰よりも!駆けずり回ってきたのはあんたじゃねえか!」
政次「それこそが小野の本懐だからな。忌み嫌われ井伊の仇となる。恐らく、私はこのために生まれてきたのだ」
龍雲丸「分かんねえわ、俺にゃあ」
政次「分からずともよい」
直虎は助け出された後、龍雲丸からその話を聞いた
直虎は飛び出していこうした
龍雲丸がその腕をつかまえて言った
龍雲丸「尼小僧様、もうやめとけ」
直虎「われが話をしてくる。忌み嫌われるために生まれてくるなど、そんな、ふざけた話があるか!」
龍雲丸「あん人はやりたくてやってんだよ!」
直虎「お前に何が分かる!政次は幼いときから、家に振り回され、踏み潰され……それの……それの何が本懐じゃ!」
龍雲丸「井伊ってのはあんたなんだよ!あの人の井伊ってのは、あんたのことなんだよ。小野って家に生まれたことで振り回されたかもしんねえ、つらい目にも遭ったかもしんねえ。けど、その気になりゃそんなもんは放り出すことだってできた。あん人なら、井伊をひねり潰すことだってできたはずだ。そうしなかったのは、あん人がそれを選んだからだ!」
直虎「頼んでなどおらぬ。守ってくれなどと頼んだ覚えは一度もない!」
直虎は答えを探すように井戸端で座禅を組みつづけた
南渓がやって来た
南渓「……次郎。今日、政次が磔にされるらしい。われらは引導を渡しにいくが……行くか?」
直虎「行きます!」
直虎は南渓たちについて行った
政次は足を引きずりながら連れ出され、磔にされた
政次の前で、近藤の家来が槍を構えた
その時、直虎が突然走り出した!
そして、側にいた家来の槍を掴みとると、政次の前で槍を構えたの
政次をキッと睨みつけると、その槍で政次の心臓を一突きした
直虎「地獄に堕ちろ、但馬!」
おもな出演者
井伊 直虎 主人公(次郎法師) 柴咲コウ
小野 但馬守 政次 井伊家重臣 高橋一生
中野 直之 井伊家家臣 矢本悠馬
南渓和尚 龍潭寺の住職 小林薫
德川家康 松平家当主 阿部サダヲ
瀬名 家康の正室 菜々緒
【大河ドラマ放送日時】
毎週日曜 総合テレビ 午後8時より
BSプレミアム 午後6時より
再放送 毎週土曜 総合テレビ 午後1時5分より
●各回のあらすじはコチラ です➡「おんな城主 井伊直虎 」あらすじ一覧
しのぶの一言
あまりの壮絶な最後に絶句
涙が止まりませんでした…
直虎の政次を見る真っ直ぐな目と
血を吐きながらも憎らしいことを言い返す政次
その光景だけを思い出すだけで、鼓動が早くなって、涙が溢れてきてしまいます
ただ、少し時間が経ってからこう思いました
政次は死んではいない!
直虎が政次に手をかけたことで、政次の魂は直虎の中でずっと生きていると
もう政次には会えないとしても
直虎の中に政次はいるのだと